« 北東の大地、逃亡の西 スコット・ウォルヴン | トップページ | うるまシーサー 宮城光男 »

2009年1月29日 (木)

ばかもの 絲山秋子

イタチやクマやモグラのとうみんじゃないけんど、厳冬の季節は、ぬくぬくぽかぽかの羽毛布団につつまれて、本を読む至福の時期。「晴耕雨飲」ならぬ、「夏歩冬読」なのであります。そうして、そういう時期だからこそなのか、オモシロ本が続出です。今回は、柄にもなく、純愛小説のご紹介。

芥川賞作家・絲山秋子さんの最新作「ばかもの」。主人公のヒデは気弱な大学生。強気強気の27歳の恋人・額子との愛の物語。冒頭の第一話は、いきなりセックスの場面から始まる。彼が買ってきた「餃子弁当」が脇役。セックスしている最中も、彼の頭の中は、いかに額子を気持ちよくさせるのかと、餃子が冷たくなることをぐるぐると考えている。

ばかもの Book ばかもの

著者:絲山 秋子
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

「泣ける文学小説」を書き続ける、絲山秋子は、今回もとてもドラマチックな展開の物語をプレゼントしてくれました。第二話から、サブと額子ともども急激な展開をしていくのでありますが、これは読んでのお楽しみ。

バックグラウンドで登場する音楽、イエスの「ランドアバウト」も効果的。挿画の福嶋舞さんの絵もいいなぁ。

『Nothing』ナッシング 福嶋舞 作品集 Book 『Nothing』ナッシング 福嶋舞 作品集

著者:福嶋 舞
販売元:リトルモア
Amazon.co.jpで詳細を確認する

そうして表題になっている「ばかもの」という言葉も、二度登場するのですがとても効果的に使われています。一度目の登場の「ばかもの」は、第一話の最後に出てくるのですが、ノロケに近いような愛の言葉。この「ばかもの」という言葉を見たとたんに、ぐいぐいと頁をめくりたくなるのでありました。

言葉はなかなか、人間を超えられないから、「ばかもの」や「ばか」という記号も、北極から南極のように宇宙のような幅の広い感情や意味を持っていますが、発信する側と受信する側の波長がぴったりとしていると、ちゃんと伝わるのであります。記号が命をもち、言葉になるのだろうなぁ。

出版社のコピーで言うと『絶望の果てに響く、短く不器用な愛の言葉。待望の恋愛長編小説-気ままな大学生と、強気な年上の女。かつての無邪気な恋人たちは、いつしか別れ、気づけばそれぞれに、取り返しのつかない喪失の中にいた。行き場をなくし、変わり果てた姿で再会した二人の、むき出しの愛。生きること、愛することの、激しい痛み。そして、官能的なまでの喜び――。待望の恋愛長篇。』ということであります。

最終章に登場する二度目の「ばかもの」で感涙じゃ。絲山秋子なかなかいいぞ。

愛は大変だけど・・・。

合掌。

|

« 北東の大地、逃亡の西 スコット・ウォルヴン | トップページ | うるまシーサー 宮城光男 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/105632/27339983

この記事へのトラックバック一覧です: ばかもの 絲山秋子:

« 北東の大地、逃亡の西 スコット・ウォルヴン | トップページ | うるまシーサー 宮城光男 »